初乗り体験記
納車当日、さっそく走ってきました。
昼過ぎからの雨の中、鈴鹿峠と関が原を回る一般道オンリーの200マイル。この間、無給油でした。
とりあえず、200マイル走って感じたことを。
長所
- 乗車姿勢が楽。調整機構の威力は絶大。ちなみにハンドルは目一杯手前で目一杯絞り込み、シートは中段の800mmでベストフィット。
- エンジンが静かでトルクフル。アイドリングちょい上からまさにトルクの塊。低速時にもエンストさせる気がしない。
- 法定制限速度付近で流すのが苦にならない、むしろ得意といえる穏やかなエンジン特性とギア設定。
- シフトフィーリングはまさにシルキータッチ。クラッチの構造からして当然のことなのだが、長らく国産車に乗り続けていると、すごく新鮮に感じる。そして疲れない。
- 足回りの安定感が素晴らしい。雨の高速コーナーが全く恐くない。
- スクリーンを立てると顎から首に走行風が当たらない。まさに鉄壁のガード。
- パニアケースの威力は絶大。容量よりも、出し入れする時間が短縮されるのがありがたかった。立ちゴケかました時の車体保護にも有効。
- 付いててよかったエンジンガード。早速、活躍の機会あり。
- 憧れだったシャフトドライブ。一日中雨でもまったくお構いなし。雨が止んでもチェーンの注油は不要。
- Brembo製ブレーキはやはり絶品。制動力、コントロール性とも文句なし。これも車重を忘れさせてくれる一因になっているはず。
短所
- サイドスタンドが短い。路肩に停めてコケそうになった。
- スクリーンを目一杯立てると足元が見えない。このおかげで路肩が低くなっているのに気付かず、立ちゴケかました。快適さと諸刃の剣か。
- まん丸のミラーは意外と視野が狭い。
- 純正パニア装着状態では、一般道でのすり抜けはまず無理と思った方がいい。動研製の薄型の蓋に交換すれば少しはマシになるが、片側3万円以上する。
- パニアケースはその容量があだになって、ほんのちょっとの荷物を積む時に暴れないように苦労しそう。
- 樹脂製タンクカバーには磁石で貼り付けるよくあるタイプのバッグを付けられない。純正品は4万円以上もする。
その他
- ウインカーの操作、慣れるにはもっと時間が必要。200マイル後でもまだ考えながら操作していた。
- クラッチもスロットルも重いが、まったく疲れを感じなかった。翌日も疲労が残っていない。大らかなエンジン特性のおかげで操作回数そのものが猫よりずいぶん少ないせいかもしれない。
- 燃費が思ったほど伸びなかった。一般道オンリーで17km/L。20以上を期待していたのだが、これで普通なのだろうか。渋滞さえなければもう少しは伸びるはず。
- ガソリンタンクは満タンで23リットル、リザーブ4リットル。燃料警告灯が点灯するまで引っ張るよりも、途中でこまめに入れた方が一度に出て行く金が少ないので精神衛生上いいかも。
- この車両はニュートラから1速に落ちにくい時がある。コツを掴むまでは信号待ちがちょっとした鬼門だった。
- カタログスペック上の250kg超という車重を、走行中も停止中も、立ちゴケの引き起こしさえも感じられなかった。これは立派な長所だと思う。しかしサンダーキャットなら余裕で支えられるはずの車体の傾きが、そのまま立ちゴケに繋がった。車重があることを忘れていると、強烈なしっぺ返しを喰らうことになる。
- 加速感に乏しいエンジンフィーリングだが、シフトアップする度に恐ろしい勢いで車速が上がっていく。しかも走行風が当たらないので全く速度感がない。常にスピードメーターをチェックして意識的に速度を控えるようにしないと、気が付かないうちに赤切符を喰らうかも。
- 乾式クラッチということを知らなければ、多分、気付かないはず。つながり方にまったく違和感がない。
- シフトダウン中にクラッチを切って空ぶかしすると、車体がビクリと右に傾く。シャフトドライブのクセを消すパラレバーも、クラッチを切っては役に立たない。エンブレも猛烈なので、国産バイクの直4エンジンの感覚でラフな操作をすると恐い目にあう。
- フロントサスのテレレバーシステムには、特にクセも違和感も感じなかった。あらゆる状況において挙動が緩やかで、雨の高速コーナーでもフロント回りがビシッと決まっている。Uターンするとき、意外と半径が大きいので要注意。車体を傾けたはいいが曲がり切れないと、立ちゴケだけが待っている。
- ABSを効かせてみたが、なんだかよくわからなかった。握りこんだブレーキレバーが強く押し戻される感覚に強烈な違和感を感じたが、自分のイメージした位置より3〜4メートル手前でバイクが停止していた。ブレーキレバーの反発に慣れは必要だが、強力な武器になることは間違いない。
総評
正直なところ、他のバイクと比べて飛び抜けて優れている部分はありません。個々の部分を比較していくと、それより優れたバイクはいくらでもあります。動力性能・運動性能は最新の600ccクラスのスポーツバイクにも劣り、快適性ではより大型のグランドツアラーには絶対に勝てません。でも、学校の成績に例えるなら全教科で確実に85点を取れる優等生バイクであるのは間違いありません。
BMWのバイクはよく「どこまでも行けるバイク」と表現されることがありますが、初乗りにしてそれを実感しました。雨の中を昼過ぎに出発して夕方には戻るつもりが、気が付けば夜の11時過ぎまで走り続けていました。その日のうちに戻ってきた理由は、翌日の朝から外せない用事があるので睡眠時間を確保したかった、ただそれだけのことです。もしスケジュールと予算の制限がなければ、本当に疲れて眠りたくなるまで果てしなく走り続けてしまうのではないかと思います。
今回の初乗りでは14時過ぎに出発し、およそ1時間ほど渋滞にはまり、前を行く車のペースで一般道ばかりを23時過ぎまで走って200マイルです。出発時間をもっと早くして渋滞を避けるコースを取れば、1日500マイル程度までなら余裕で走れるのではないでしょうか。高速道路は未体験ですが、この分では例えば10時間走ると決めたら10時間できっちり1000キロ走ってくれるでしょう。
土曜日の朝からパニアにテントを放り込み、一般道をひたすら走り続けて眠たくなったところでテントを出して眠る。翌朝は高速道路で一気に戻り、月曜日に備えて十分な休養を取る。多分、こんな走り方が一番似合っているバイクじゃないのかな、と思います。
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