インプレッション3

2005/12/16

インプレッション3

2005年10月1日。R100RTで再び大型二輪ライダーとして走り出した記念すべき日です。それから二ヶ月半が過ぎました。
この間の走行距離はおよそ6,500キロ。一泊二日の泊りがけ旅行が3回、名古屋市内への通勤が数回。あとはだいたい根城であるトヨタ国周辺、設楽・稲武・鳳来方面の車の少ない山道をダラダラと流すことが多かったです。特に「瀬戸街道」と呼ばれる県道33号線の利用頻度が高かったように思います。

これだけ走りこむと、乗り出し当初には気付かなかったことがいろいろと見えてきます。燃費のいい走り方、悪い走り方。振動の多い回転数、少ない回転数。コーナーの上手な曲がり方、下手な曲がり方。等々。

燃費〜止まってはいけない〜

いいときは満タンからリザーブに切り替えるまでに310キロも走ることがある反面、悪いときは250キロに達しないこともあります。これだけ差があると、ツーリングでの燃料補給タイミングが難しいものですが、次第に傾向がつかめてきました。
いい時は停止回数が少なく、制限速度をあまり逸脱しない範囲でだいたい一定のペースを刻んだ時。悪いのはその逆で、例えば信号が多い街中だけを走る場合や、高速道路を明らかに周囲のペースから前方に逸脱する走り方をする時がそれに該当します。
エンジン回転数を3,000rpm前後に保ってトップギアホールドのままで走り続ける、これがおそらく最も燃費のいい走り方でしょう。どんなレシプロエンジンでも似たような傾向があるはずですが、これほど極端に一定回転数維持を求めてくるエンジンはあまりないのではないか。バイクというよりも飛行機のエンジンではないか。排気音もバイク然としていない...走りながら時々そんなことを感じていました。

振動〜日本で走るなら我慢しなさい〜

約2,250〜2,750rpmの範囲でかなりの振動が出ます。特に加速中、エンジンに負荷をかけて行く時に、ハンドルを握る手を離したくなるほどの振幅になることがあります。ゆえにスロットルロッカーは必須アイテムです。ホーンステイやミラーが折れるのもわかります。
2,500rpmにおける速度はトップ5速でおよそ70km/h弱。日本の一般的な幹線道路で最も多用する、いわば常用域です。このあたりに幹線国道の制限速度が100km/hというヨーロッパ生まれの性格が強く顔を覗かせています。
キャブ調整などで何とかなる話かもしれないけれど、かといって翌日ハンドルを握れないほどひどい振動でもなし。これも「味」の一つだと割り切って楽しむ余裕が日本でのライディングには必要なのでしょう。エンジンのためには時々でいいから思いっきり回してやることも必要ではないかと思いますが。
一つだけ注意点を挙げるなら、この回転域での手放し運転は厳禁。前輪が左右に大きく振れ、非常に危険です。もしやってしまった場合、直ちにスロットルを開けてエンジン回転数を変えると収束します。

コーナリング〜基本を忠実に守りなさい〜

自動車学校での教習中、「カーブの手前で充分に減速して...」という教えを耳にタコができるほど繰り返し聞かされました。R100RTはそれを嫌でも思い出させてくれます。
まずブレーキが現代のものとは比較にならないほど効かない。「突っ込み合戦」などもってのほかです。次にサスペンションが前後ともかなり軟らかめなので、コーナリング中にギャップを拾うと心臓が口から飛び出るほど車体が揺すられます。極めつけはバンク角が絶望的に少なく、すぐにセンタースタンドが接地します。余裕があると思っていても、先のようにギャップを拾ってサスペンションが沈み込むと同じ結果が待ち受けます。ギャップに対する不安定さはタイヤの細さも影響しているのでしょう。
プアな車体に比べると、エンジンはトルクが程々にあってスロットルレスポンスも適度にダルなので、コーナー脱出時には右手首を遠慮なく捻ることができます。そこでギアを極端に間違えていなければ、まずまずのペースでワインディングも楽しめます。
とはいえやはり景色を楽しめないほどのハイペースで走るのは、使い方を間違えているといわざるを得ません。ワインディングはあくまでも「このバイクにしては」という基準のハイペースで流すに留め、一抹の欲求不満は深まりゆく秋と冬の訪れを感じる心のゆとりに回すべきです。

総評〜「バイク乗り」お断り〜

R100RTに「操る快感」を求めてはいけない。自分が運転しているのは屋根のない自動車、それも走行距離を重ねたバスかトラック。あるいは翼のない飛行機。そう割り切れる人でなければこのR100RTは全くもってお勧めできません。
キャブ調整やサスペンションのグレードアップというチューニング手段もあるでしょうが、その手間と費用は旅費とメンテナンス、何よりも走る時間に回すべきです。


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