旅立ちの朝に突然襲ってきた「エンジン始動不能」という大トラブル。三中里予は「前日にフル充電しているのにセルが回らない=セルモーターの故障である」と判断しました。そしてレッカー代節約のため、セルモーターの交換という大それた作業に挑戦したのでございます。しかし...
今回のトラブルは色々な意味で貴重な体験になりました。以下、写真とともにご覧下さい。
タンクを外したところ。これからモーター交換作業の開始です。
長距離ラン出発直前だったため、22リットル入りのタンクは満タン状態。今回一番辛かったのはタンクの脱着だったかもしれません。
エアクリーナーとエンジン上の黒いBMWロゴ入りカバーを外すとモーターが見えます。
配線と2本の固定ボルトを外したらすぐに取り出せるのですが、2本のボルトの頭は非常に狭い空間にあって、普通のソケットやメガネでは回せません。
実はこの作業の前日にここまで来た時、手持ちの工具で何ともならないことに気がついて思い切り脱力してしまいました。
短めのソケットと首振りレンチを使って、少しずつ回して緩めます。首振りレンチもソケットも、今回の作業用に新たに購入したものです。
ある程度緩んでナットが飛び出てきますが、今度はモーターをずらさなければ工具自体が取り外せなくなります。ボルトは左右2本セットなので、片方ずつ均等に緩めていきます。
こんな大きな隙間だらけのエンジンなのに、妙なところが狭くなっているものです。まったく、独逸人というやつは...
これでようやくモーター本体を取り外せる状態になります。
書き忘れていましたが、全ての作業を始める前にバッテリーのマイナス側のリード線を外して、ビニール袋などを被せて絶縁しておきます。
モーター後部にはバッテリーのプラス側リード線が直接来ているので、不用意なショートを避けるためです。
モーターを外すと、大きな歯車=フライホイールが見えます。
セルモーターがこの歯車を回すことによってエンジンが始動するわけです。
モーター側には小さな歯車と、電流を流したときだけ噛み合うような制御装置(電磁石)が付いています。
フライホイールの右奥にはクラッチプレートが見えます。一応、残量を見ることはできますが、ディーラーメカ氏によると「滑る時は残量に関わらず滑るので、あまり当てにはならない」そうです。
ようやくモーターとご対面です。
ご存知の方も多いことと思いますが、このモーターはフランスのバレオヴァレオ(VALEO)というメーカー製で、走行数万キロになるとかなりの割合で壊れるという悪名高いモノです。
つい最近(11月)、日本企業がVALEO社のモーター事業を買収したそうです。
→日本電産
モーターは分解可能になっています。左がフライホイールと噛み合う歯車と、それをコントロールする電磁石。右がモーター本体です。
分解するには両者をつなぐ3本の細長いボルトを外します。あと2箇所、小さなリベットが打ち込まれていますが、もう新品を入手してあるので気にせず引き離します。
さて、問題の回転部分です。中央の丸い部品が回転子、周囲に4つ見えるのが永久磁石です。
VALEOのモーターは永久磁石を接着剤で固定しているため、これが剥離して回転子に噛み込むのが通常の故障パターンです。見てのとおり、何ともありません。
果たして、新品モーターを組み込んでもエンジンは掛かりません。ここに至ってようやく、「バッテリー急死」という可能性に気が付いたのでした。
タンクの下にはリレーがあります。中央付近の3個のかたまりは、銀=ヘッドライト、黄=スターター、緑=ウインカーです。左のオレンジ色が何なのかは調べていません。
作業中、何となくヘッドライトを付けてみたところ、ライトスイッチをオフにしても消えなくなりました。それどころかメインスイッチを切っても消えない。なんだこれは?
バッテリーが極度に弱った状態でライトを点けたため、リレーが焼きついてしまったという何とも情けないオチでした。結局、この3個のリレーもついでに交換しました。
直接の原因はバッテリーの急死でした。納車時には新品に交換しており、日頃もこまめに補充電していたのですが、死ぬときは死ぬということなのでしょう。そういえば、故障前日は妙に寒い夜でした。
無実に見えたセルモーターですが、交換後、明らかに違いがわかる回り方になりました。噛み込み、回転、そして特に最後の引っ込む時の音が明らかに違います。もし早めにバッテリーだと気が付いてバッテリーだけ交換したとしても、近いうちに間違いなく壊れていたことでしょう。そう思えるほど劇的な変化でした。
それにしても、リレーは本当に勿体無いことをしました。やはり素人判断は所詮、素人判断だということを思い知りました。
結局、レッカー代も合わせて約10万円。いい勉強になりました。