あの頃

今年の桜もいつのまにか終わってしまった。

桜を見ながら思い出していた。2年前のあの頃のこと。
あの頃、僕は腐っていた。仕事はヤル気ナシで、一応仕事場に顔は出していたものの心ここにあらずといった感じで何も成果を出せない日々が何週間も続いていた。気を紛らわすため、通勤電車に折り畳み自転車を持ち込んだり、バイクで首都高速を往復したりといった意味のないことを繰り返していた。そういえば、スピード違反で検挙されて赤切符を喰らったのもあの頃だった。
バイクで出勤した時は、近くの隅田川の土手にある公園の通路にバイクを止めていた。そこは桜並木になっていて、昼休みになると花吹雪に埋もれる自分のバイクを見るのが楽しみだった。自転車を持ってきた時には中央大橋を渡って対岸まで行き、運動がてらにラーメン屋さんを探していた。

今、仕事の方はあまり辛くないものの、ヤル気が出ないあの頃の状態に陥ってしまっている。首と肩のコリがあまりにもひどくて仕事にならない状況もそっくりで、ついに先週から週2回ペースでの通院治療を始めている。
だが、本当に問題なのは、多分、精神的なものなのだろうと思う。最近、Webで健康関連のページを探すことが多くなったのだが、「気分障害」という言葉が目にとまった。いわゆる「躁鬱病」のことらしい。自殺防止のための薬物療法が有効である、なんて記事が目に付く。
僕の場合、自殺はありえない。他殺、それも自分が加害者になる可能性の方が高い。首の治療を始めてから少し落ち着いた感もあるが、ちょっと前までは自分でも危険な運転をして喧嘩を売って楽しんでいた節がある。前の車、煽ってやるか。どこかに突っ込んだら面白いだろうな。後ろの車、急ブレーキで脅してみるか。追突されたらどうやって金を搾り取ろうかな。もし喧嘩になって殺されたら、それもまた一興じゃないか。そんな危険なことを考えるのが数少ない楽しみになっていた。

車検を通した2ヶ月後という奇妙なタイミングでバイクを買い換えたのも、そんなつまらない日常に少しでも風穴を開けようと思ったからだ。あと2ヶ月待ったら現金一括払いで買える値段なのに敢えてローンを組んだのも、何か一つくらいは世間との関わりあいを保っておかないと危険だと感じたからだ。
他人、特に個人を巻き添えにしたくはないので、サークル活動・援助交際・恋愛・結婚などは考えていない。考えないこともないのだが、今はまだ淋しさよりも、問題が起こった時の面倒さに対する恐怖心の方がはるかに強いというだけだ。問題を起こさない自信などあろう筈がない、いや、必ず何か問題を起こすに違いない。起こらなければ自分から起こしてやる。

あの頃から何も成長していない自分。退行ばかりが目立つ自分。体調がもう少しよくなって、それでもなおこの気持ちが上向きにならないなら、今度こそ精神科の門を叩こうと思っている。多分、気分が上向くことはないだろうから今のうちに行っても同じことなのだが。
2003/4/22