雨の日に思うこと(4)

連休末から週末の天気がよろしくない。
ひさしぶりにノンビリしているのだが、レースのカーテン越しに見る空は灰色で、時折通り過ぎる自動車のタイヤの音にも濡れた路面を感じて気分がめいる。

雨空を見ているうちに、ふと昔のことを思い出した。

あれは入社2年目の中ごろだったか。
同期入社の女の子が「ビット」と「バイト」の違いが判らないんで怒鳴りつけてしまったことがある。
その子はしばらくして事務職に転属になって、5年目に自分が転勤した後で結婚したという噂を聞いたが、その後の消息は知らない。
今はいい「お母さん」になっているだろうか。

入社10年目ごろだったか。
デスマーチ中に入社2年目の女の子がプログラマーとして配属されたが、使えなかったため客先にテスターとして引き抜かれてしまった。
その子は数ヶ月にわたる過重労働に耐えていたが、いつの間にか退職していた。
新たな人生はうまくいっているのだろうか。

女性と全く縁のない自分が、今日に限ってなぜこんなことを考えたのだろう?
最近、身の回りで結婚の話題が続いたので、意識の底に眠っていたかすかな結婚願望が、気を抜いたせいで表に出たのかもしれない。
だが、女性に関係する記憶は幼少時代を含めてすべて苦いものでしかない。それゆえ、相手から嫌悪されるように仕向けるか、こちらから遠ざけるか、自分の行動には選択肢が2つしかない。

そして今。

今年、院卒のかわいい女の子が入社してきた。
あいにく希望分野の仕事が薄く、教育と称して自分のところに配属されそうになった。
院卒とはいえIT初心者なので即戦力にはならないし、彼女が強く希望する分野は自分の現在の業務と全く異なる。そこで「来て貰っても彼女の将来のためにはならない」という幾度かの控えめな意見のあとで、少し無理して仕事を前倒しで進めて「こちらにも仕事はない」と断ってしまった。
無垢の新人こそ早いうちに様々な業務を経験させるべきであり、自分の行動は組織の構成員として、特に技術指導をするべき立場の人間として許されるものではない。だが、当人が女性であるという一点が、正論を受け入れられない障壁となっている。
早晩、自分は組織から放逐されるだろう。その時、新たな人生を楽しむだけの余力が残っているだろうか?

また外を見る。雨は一日中降り続くだろうが、下らない思考回路を断ち切るため、外出することにした。

2006/5/13