今朝、自転車で最寄駅に向かう途中の公園横を通り過ぎるとき、蝉の鳴き声を聞いた。今年初めてのような気がした。そう、気が付けばもうそんな季節だ。
蝉は数年間の幼虫時代、土の中で木の根から養分を吸い取って成長する。そして地上に出て成虫になると、わずか数週間の間に交尾・産卵を済ませて死んでゆく。だから今年出てきた蝉は、数年前に生まれて土の中で過ごしてきた奴らだ。僕がこの地に来る前から土の中で過ごしてきた奴らだ。そう考えると、なんともいえない感慨がある。
もう少しで梅雨も明けるだろう。それからが本格的な蝉の季節、夏本番だ。子供達は今週末から夏休みが始まる。僕はといえば8月中、病気療養を名目にした夏休みになりそう。入院するでもなく帰省するでもなく、きっと蒸し暑い部屋を拠点にして近場をウロウロして過ごすのだろう。仕事をするわけでもないが仕事のことを忘れられるわけでもなく、多分、ひと月たっても何も変わってはいないだろう。それでもいい。最近、そう思うようになった。

蝉の鳴き声が聞こえなくなる頃までに、果たして僕は元気を取り戻すことができるのだろうか? いや、そんな期待はしないでおこう。今年の夏はいつになく虚ろな夏になりそうだ。虚ろな世間の移ろい行く様を眺めながらのんびり過ごす。それでいいじゃないか。蝉の鳴き声を聞きながら。

2003/7/18