選挙

ここ愛知県のとある町では、先々週・今週と続けて選挙がある。そのたびに、スピーカーの音量を目一杯上げてがなりたてる街宣カーが住宅地を駆け回っている。昔から変わらぬ日本の選挙運動の風景である。
少なくとも、この町を行くセンセイ方の応援団たちは、センセイ方が何を考え、どのように行動しているのかを我々に伝えてはいない。ひたすら「おねがいします」「がんばります」「○×でございます」を繰り返すだけだ。
正直なところ、僕は愛知県、特にこの町の土地柄に良い印象を持っていない。巨大な自動車メーカーの社員が幅をきかせ、田舎然とした隣組のような自治組織に縛られ、楽しめる場所はなく、旨い食べ物もない。折りしも県内では最近、凶悪な事件が頻発している。もし逃げ出すことができればこの地を離れたいと思う。
思えば就職してから5年毎に転勤していることも、政治に対する無関心さの重要な動機になっていると思う。最初の5年、日立にいた頃はまじめに投票に出かけていたが、川崎に移ってからは、特に後半の2年は「どうせまたあと少ししたらどこかへ移る=この街と関係なくなる」という感情が強まった。そして今、この町に来てからは一回も投票に出かけていない。馬鹿らしい。どうせ労組や自治会で根回しして集団投票するのだから、流れ者の僕らが出る幕はない。好きなようにすればいい。
一昨日、痛む腰をかばいながら仕事場から駅まで歩いているときに街宣車とすれ違った。アリガトウゴザイマス。ガンバリマス。まったく、センセイ本人はともかく声を張り上げているオバチャンたちはお気楽なものだと思った。あれでいくら貰っているのだろう。ストレス解消にもなっておいしい商売なのだろう。ウルサイ。ダマレ。そう言ってやりたかった。傘を投げつけてやりたくなった。
投票のやり方を今と反対にすれば面白いかもしれない。すなわち「落選させたい候補者に票を入れる」というやり方にするのだ。票が少ない人から順に当選。票が多ければ多いほど、そいつは評判が悪いことになる。当然、知名度の低い新人が当選する確率が飛躍的に上がり、政治に新風が吹き込まれることにも、少しは期待がもてるかもしれない。

2003/4/25