2003年大型連休の思い出

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初日・4月30日(水)

初日の行程

旅立ち

「出発間際にベジタリアンの彼女は東京に残してきた恋人のことを思うわけだ...」
佐野元春の「彼女はデリケート」を聴きながら、雨があがるのを待ち続けていた僕は、昼前になって待ちきれずに出発した。僕はデリケートな男じゃないから、少々の雨で貴重な連休中の1日を潰したくはない。それに今回のツアーから、旅の相棒は赤猫でも黒猫でもなく、雨を気にしないシャフトドライブのBMW R1100RSなのだ。4月、突発的に入手したのはひとえにこの旅の準備に他ならない。今思えば、現在治療中の鬱病の影響もあったのかもしれない。
とにかく、「今、雨は降っていない」ので僕は出発した。荷物を満載した左右合わせて20kg近いパニアケースを装着したRSをアパート前から少し離れた通りまで押し歩き、エンジンを掛けて発進。最近出来た豊田東ICから東名高速に上がった。これから一気に西へ向かい、九州を目指すつもりだった。
上郷SAでガソリンを満タンにして、まずは名神を一気に抜けて山陽道を目指す。今にも降り出しそうな曇り空だが、路面は乾き始めていた。スクリーンを一杯に立て、早い車の流れに乗ってノンビリと西へ向かう。養老SA付近で前方の雲行きが怪しくなったことに気が付いた。この辺り、天気が良くないときは大体雨なのだが、関ヶ原を越えるためだけに雨具を着るのも面倒だったので、そのままSAを通過した。案の定、すぐに雨が降り始めた。

雨の名神にて

伊吹山を過ぎ、北陸道の分岐点を過ぎた。雨は一向に止む気配がない。多賀SAで雨対策をしようかすまいか悩んだが、結局通過してしまった。その直後、雨はますます強くなった。ヤバイ、このままではビショ濡れになる。ペースを上げた僕の前に妖しいオーラを発する車が現れた。速度を落としてそろりと横に並ぶとやはり覆面パトカーだった。仕方なくアクセルを戻し、左車線に戻って覆面パトの後ろに付く。僕の後に付いて来ていた車が、僕の動きを見て同じように速度を落として左車線に戻る。あっという間にバックミラーには長い列が出来た。これはこれで面白かったが、雨はますます強くなり、ある程度の防水機能があるはずのジャケットからも水が染みてくるのがはっきりわかる。その先のICで覆面は出て行ったが、僕はもう半分ヤケになって、雨の冷たさを楽しんでいた。
京都に入って桂川PAでようやく一息ついた。雨はようやくあがっていたが、僕はもう全身びしょぬれだった。かろうじて腹だけが濡れていない。猫ならあの程度の雨でも走っている限りは肩口しか濡れない。RSのカウルは思ったより雨に対して効果がないことがよくわかった。

山陽道通過中

連休中なので西宮付近での渋滞を覚悟していたのだが、飛び石連休のせいか、思ったよりあっさり山陽道に入った。竜野西SAで最初の給油。空はまだ晴れないが、雨は完全に上がっている。服もずいぶん乾いてきた。このまま走れば岡山県内で完全に乾くだろう。風がよく当たるようにスクリーンを下げ、再び本線に戻る。
兵庫県、岡山県、広島県を淡々と通過する。広島市内手前の峠道をちょっと飛ばした他は、100〜120km/hで本当にノンビリと走っていた。次に休憩を入れたのはなんと山口県内、下松SAだった。午後6時を回ったところ。ここまで約600kmを6時間少々で走りきった計算になる。朝から出発していればとうに九州入りしているはずだ。別に無理して休憩を取らなかったわけではない。休憩が必要ないのだ。
秋吉台のある秋芳町を過ぎると日は落ちてすっかり暗くなった。曲がりくねった道をやけに飛ばしていく地元ナンバーのセダンにしばらくついていったが、さすがに走りなれている感じで、ついに振り切られてしまった。悔しさを紛らすために王司というPAで缶コーヒーを一杯。そして関門海峡・壇ノ浦にたどり着いたのは午後8時過ぎ。さすがに全く疲れていないわけではないが、まだまだ走る元気は残っていた。関門大橋の写真を撮って再び本線へ戻った。
関門大橋 コクピット
関門大橋トヨタからここまで466マイル。見えないけど(^_^;)

九州入り

関門大橋を渡り、ついに九州入り。前年のゴールデンウィークに赤猫で来て以来。あの時は旅の途中でタイヤの溝が無くなってしまったので、福岡までしか行けなかったが、今回は違う。タイヤはBT−020という耐久性には定評のあるもので、中古とはいえフロントはショップのご好意で新品だしリアもまだ8分山。そしてRSは飛ばさなくても楽しいバイクなので、急激な消耗の心配は全くない。ひたすら南へ突き進むのみ。
福岡から先は全く知らない土地だ。しかも夜で、景色は全く見えない。それにしても九州道は車のペースが速い。こちらも100〜110km/hのペースを保っているのだが、後ろからブンブンと追い抜かれていく。
いつの間にか熊本県に到達。玉名というPAに寄ったところで急に眠気が襲ってきた。時間は午後10時半。それまで気に留めていなかったが、距離計を確認するとトヨタ国を出て800キロを越えている。昼前に出て800キロだから、朝から走っていると1000kmを優に越えていたはずだ。30分ほど仮眠を取ったりコーヒーを飲んだりしたが、眠気は回復しない。仕方がない、今日はまだ初日なのだ。明日のためにここで寝ることにした。バイクを駐車場の端によせ、そのすぐ傍の芝生の上にテントを張った。そういえば高速のPAでテントを張るのは初めてだった。

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