ラーメン(高山)
甚五郎
「高山ラーメン」の存在は、何かで知っていた。だが、どんなラーメンなのかはまったく謎のままだった。
- 味は味噌?塩?醤油?
- 麺は太麺?細麺?ストレート?縮れ麺?
そんな疑問も、川崎から片道で400キロ以上という遠さがネックになり、なかなか解消しなかった。
今はトヨタの国、片道で200キロ以内。高速道路も割と近くまで通っている。ところが仕事がなかなか片付かないまま夏が過ぎ、秋には60日の免停でバイクに乗れない日々を過ごした。冬の気配が濃厚になった12月初旬、ようやくその機会が訪れた。
朝9時にアパートを出て、ひたすら一般道を北へ向かい、昼過ぎに高山市内に入った。さっそくラーメン屋を探したのだが、どこにもそれらしい案内がない。市内を一旦通り抜け、国道41号線にかかる橋のたもとにそれらしい大きな看板を見つけたが、肝心の店が見つからない。あきらめて高速で帰ろうとした矢先、その看板とは違う店を見つけた。駐車場に空きがあるのを見つけてバイクを押し込み、かじかんだ手をこすりながら店の戸を開けた。
カウンターと小さなテーブルが2つばかりの、細長く狭い店内はほとんど満員だった。5〜6人の団体客が待っている隙に、1つだけ空いた席につき、チャーシュー麺の大盛りを注文した。いったいどんなラーメンが出てくるのだろう、などといった期待は、今思い返すとあまり感じなかったような気がする。とにかく寒さと空腹に震えていた。
混んでいる割に早く出てきた大盛りチャーシュー麺は、まず麺の細さが目を引いた。麺の細さだけをいうならソーメンのそれだ。ただ細いだけではなく、かなり縮れている。スープの色は関東の一般的な醤油ラーメンのそれに近い、透明感のない黒。スープの表面に顔を出している麺・具の下には何も見えない。お味のほうも相当きつそうだな、と感じたが、意外に薄味。というか、見た目さえ気にしなければ普通の醤油ラーメンだ。いや、薄味という表現は間違っている。塩気がきつくなく、たまり醤油のような味の濃さがある。その味の濃さが、縮れた極細麺によく絡まって、実に食べやすい。チャーシューがまた絶品。脂の乗ったバラチャーシューは柔らかく、スープを絡めるとこれまたいい味をしている。これは旨い。マジで旨い。
注文した後で、昼時にはライスが付くことに気が付いた。「しまったな...」と思ったのだが、何のことはなくスープまでも残さずに食べきれてしまった。大満足で店を出た。
翌週、またもや高山に足を運んだ。今度もまた同じこの店。そして同じくチャーシュー麺の大盛り。前回と違ってライス抜きで注文した。前回はあんまりにも腹が減ってたんで過大評価してたかもしれんと思って、実は朝飯を食べてきたのだ。それでも食べてみて思った。やっぱ、旨いモンは旨い。なんていうのか、小細工なし、薬味に頼らない潔さを感じた。
雪降る氷点下の東海北陸道で家路をたどりながら、やっぱライスも付けとけばよかった、と思うのだった。
2001/12/12
伝七
「甚五郎」からの帰り道、国道41号線の反対車線に小さなラーメン屋があることに気が付いてはいた。国道の南向きを走ると反対側でわかりやすいのだが、北向き、すなわちトヨタ国からやってくる時には非常にわかりづらい。何度となく通り過ぎ、その度に少しずつタイミングを掴んでいた。
曇り空の日曜日、またもや性懲りもなく高山CITYにやってきた。今度は「甚五郎」以外のラーメン屋に寄る!と、それだけ決めていた。宮峠を越え、市内に入って国道41号線バイパスを進む。この辺か、もう少し先か...あった!と思って急ブレーキを掛けたが間に合わず、入り口でちょっとモタモタしてしまった。
小ぢんまりとした店内は4人掛けのテーブルが2つと、やはりテーブルが2つあるお座敷。表に停めてあったバイクの持ち主と思われる先客が1人だけ。さっそく、チャーシュー麺大盛りを注文した。待っている間に客が2人ほど増えた。
出てきたラーメンは甚五郎のそれと同じような、コシのない縮れた極細麺。スープは少し透明感のある、普通の中華スープ。薄切りのチャーシューは特徴のない普通のチャーシュー。麺の量が予想外に多かったが、結構いけるじゃん。うん、普通のラーメンだよ、これは。こういうのが欲しかったんだよ。
ますます高山ラーメンへの期待感が大きくなった。いつか電車で来て、一日市内をぶらついて店を探してみたい。どうせ冬場はバイクで来れるところじゃないしね。
2002/9/30
東海北陸道(北行き)・長良川サービスエリア
いつだったか覚えていないが、どこかの高速のどこかのサービスエリアで高山ラーメンを食べた記憶があった。いや、正確にいえば、後になって「アレが高山ラーメンだったのか」と思った。それがここだった。
高速のSAだと思って馬鹿にするなかれ。ここのラーメンとチャーシューはマジ旨い。一食の価値あり。なにより高山より圧倒的に近い。
2003/6/10