さよなら、赤猫(2)

2003/12/25
さようなら、赤猫。
ありがとう、赤猫。

赤猫の想い出

黒猫を手放した時のように、想い出を辿ってみようと目を閉じた。しかし楽しい想い出があまり浮かんで来ない。
黒猫を手放す時にも書いたが、ロングツーリングでは赤黒どちらの猫に乗っているのかがどうでもよくなっていて、赤猫のハッキリした想い出が心に残っていないのである。
それでもいくつか挙げてみよう。

九州帰りタイヤ丸坊主事件

赤猫を買った年の春のこと。山陰をノンビリ走って九州までたどり着いたところでリアタイヤが寿命を迎えてしまった。帰り道、中国道を80〜90km/hのスローペースでおっかなびっくり帰っていたのだが、折からの向かい風とフル装備の荷物のせいでタイヤが見る見るうちに削れてゆく。
結局、兵庫県内で高速を下り、残りを下道で帰ってきた。今思い返しても心臓に悪いツーリングだった。

北陸道最高速バトル事件

季節は不詳。北陸道をすっ飛ばしていた僕は、同じようなペースですっ飛ばしていた旧車(多分、カワサキのZ系)を追い抜いた。ところがそいつは根性を出してついて来る。そこで追いつかれるのを良しとする僕ではなく、同じようにアクセル全開モードに入った。
気が付くと5速でタコメーターはレッドゾーンに突入し、速度計は260km/h付近を指していた。一瞬、「エンジンを壊したか」と冷や汗が出たが、赤猫は現在まで何の問題もなく走りつづけている。
ちなみに5速13,000rpmで計算上は245km/hほどになる。

秋の大転倒事件

34歳の誕生日を迎えた翌日。僕は理由もなく山道を走っていた。気がつくと僕は3人のツーリングライダーに抱きかかえられていた。目の前の赤猫は無残な姿をさらしていた。自分が転倒したのだということを認識するのにしばらくの時間が必要だった。
今もって、転倒した瞬間が全く思い出せない。悪夢のような自損事故だった。

左側追い越し事件

先の大転倒から復活した今年の春。いい気分で東名高速を東へ向かっていた。右車線を走る遅い車をいつものように左から追い抜き、バックミラーを見ると、その車が急に左車線に針路変更した。そしてその後ろから白黒に塗り分けられた悪趣味な車が。
迂闊なことに、まったく気が付かなかった。結局、速度違反は見逃して貰って「左側追い越し」で済んだのはまさに不幸中の幸いだった。

こうしてみると、やはりいい想い出があまりない。どこかへ行って楽しんだというよりも、その過程でスピードを出して楽しんでいた。いや、スピードを出すことに慣れすぎて、楽しみにさえもならなくなっていた。
10万キロ走った黒猫は幸せだったと思える。しかし3万キロ少々の赤猫はどう考えても幸せなバイクではなかった。今思えば2年前、何も無理して手に入れることはなかった。FZS600で納得するべきだった。かわいそうなバイクだと心から思う。それでいてやはり愛着心がちっとも湧いて来ないのも厳然たる事実。
あとは下取り価格がいくらになるか、それだけが楽しみである。

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