BMW購入顛末記(3)

魔物に出会ってしまった。
魔物に魅入られてしまった。

【試乗しないポジションチェックとは】

まずは訂正。
ラジアルじゃない? いえいえ、ラジアルタイヤでした。ちなみに豪華ツアラーのLTはバイアスで、幅が1サイズ細い。おまけに前18後17だって。
ABSとキャタライザはオプションらしい。問題の実車に装着されているか否か、現時点では不明。

K1100RS、さすが不人気車らしく、文字で手に入る情報が意外に少ない。それでは、と画像を検索してみると、大きなものが結構あった。よしよし、これでポジションチェックができるというもの。数時間Webをさまよった挙句、ドイツのサイトで他車種を含めて真横からの写真画像を数枚入手することができた。

チェック対象車種として、BMWは渦中のK1100RSとK1200RSの初期モデル、それに現行型のR1150RSの3台を選ぶ。いずれもすぐには甲乙つけがたい乗り換え候補車だ。それと我がYZF君の画像をExcelのワークシートに貼り付けた。
まずはフロントホイールのリム外径を目安に大まかな縮尺を合わせる。これは3台が3台とも同サイズ(17インチ)のフロントホイールを採用しているためだ。次に精度を上げるためにホイールベースや全長、シート高など様々な箇所を採寸し、数値と数式をセルに打ち込んで縮尺をチェックする。採寸の方法は、2点間に直線を引き、その図形のプロパティーを見るだけ。これを繰り返して4車の画像の縮尺を合わせる。単純だが結構面倒な作業だ。
縮尺を合わせた後、それぞれの画像の上に三角形を描く。ハンドルバーの中間点、ステップの真上、そしてシートの着座点(僕の場合は体とシートの接触部分の最先端)を結ぶ。そうしてできた三角形を別の場所にコピーし、お互いを重ね合わせる。縮尺とは関係なく大体の傾向は見て取れる。三角形の形がスポーツ車なら横長に、オフ車やツアラーなら縦長に、といった具合だ。しかし同じカテゴリーにある4車では、どれも似た形にしかならない。そこで角の部分のわずかな差を頼りにして「こっちの方がハンドルが遠い」とかを判断しなければならないわけだ。これは以前YZF君を購入する際に思いついた手法である。

意外なことがわかった。YZF君は所詮スーパースポーツ崩れのツアラーなのでハンドルは低目遠目、ステップも後ろ下がりなのは当然だが、問題のK1100RSのポジションが、実はかなりツアラー寄りだったのだ。ハンドルは4車中一番高目で手前にあるし、ステップとシートの距離も同じく一番長い。K1200RSとR1150RSはその中間に位置している。K1200RSもR1150RSも、シート高とハンドルバーに調整機構があるのでもう少し楽なポジションにできるはずだが、それを差し引いても乗車姿勢はずいぶん楽そうなのだ。
縮尺を間違っているのかと何度も再計算を繰り返したが、結果は同じだった。撮影位置や画像縮尺率の制限(1%刻み)ゆえの誤差を考慮しても、ほぼ間違いなさそうだ。

他の画像でチェックすると、ハンドルはトップブリッジ上にあるのは勿論だが、フロントフォークの軸よりも心持ち後ろにあることが確認できた。国産ネイキッドのバーハンドルの取り付け部分がトップブリッジに埋め込まれているイメージ。そしてステップの方は、他の3車が前後輪の車軸を結んだ線より数センチ上方にあるのに対して、K1100RSはほぼ線上にある。後輪が18インチというのを加味しても、かなり低めの位置である。バンク角が少々心配になるかもしれないが、膝に余裕があるのはありがたいことだ。

画像によるチェックは終了したので、再び文字による情報を漁り始めた。掲示板を検索してみると、BMWオーナー専用っぽいのが見つかった。そこでもK1100RS関連のスレッドはたった2件しかなかったが、興味深い書き込みがあった。
それは、K1100RSだけでなくK100シリーズには「曲がりにくい」という共通点があるらしい、ということだった。ご自身でWebページを持っておられるあるオーナーさんが「とにかく曲がらない、疲れる、肩が凝る。何で?」という質問を投げかけておられて、それについたレスのいくつかに「K100も同じ...」という感想があった。K1200RSはそうでもないらしい。これは困るじゃないか。せっかく車重が軽いのに、「重くて曲がらない」のならK1200RSの方が(立ちゴケしないかぎりは)いいに決まっている。
さらに記事を読み進めていき、その掲示板で得られた結論は、「まったくの駄目バイクではない。要はタイヤの空気圧と磨耗のこまめなチェックと、基本に忠実な乗り方が大事」ということだった。それならば問題ない。この僕だって、伊達にヤマハのスポーツバイクを何台も乗り継いできたわけじゃないはずだ。大型免許も補習なしで取れたんだし。
でも前にお世話になっていた店の社長さんとハンドリングの話をしていた時に聞いた、「あなたはもうヤマハ車以外には乗れないかもよ」という一言も思い出す。YSP店だから他のメーカーに乗り換えて欲しくない気持ちが混じっていたかもしれないけれど、確かに僕はタイヤを前後とも端から端までほぼ目一杯接地させる方なので(さすがに使い切れはしないけど)、「こんな人はあまりいない」といわれたことも何度かある。それがいわゆる「ヤマハ流ハンドリング」のおかげなのだとしたら、「基本に忠実」の一点はあやふやになってしまう。

余計な心配をしても仕方が無い。とにかく写真画像で判断する限りライポジは合格点が出せたのだから、あとは店の人に実際に聞いてみよう。一般の試乗車ではないが、もし可能なら試乗もさせてもらおう。試乗は無理でも跨ってみる位はしないとね。

だんだん、魔物の形がはっきりしてきた気がした。

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