赤猫購入顛末記

2002/2/12
性懲りもなく、2台目のサンダーキャットを購入してしまいました。

2001年も暮れが近づく師走のある日、僕は近くのバイク屋に足を運んだ。目的は新しいサンダーキャットを手配すること。いろいろな情報によると、来年度の入荷予定なし。つまりサンダーキャットの国内新車は2001年モデルが最期になりそうなのだ。
その理由は排ガス規制。まったく、つまらない法律だ。2サイクルのみならず、4サイクルの古いモデルも消滅させようとしている。だいたい、バイクに適用すること自体に意味があるのか?と大方の人は感じているだろうが、町中で見かける新聞・郵便カブやビジネスバイク・バイク便の数を考えると、いちがいに嫌とはいえないだろう。そう、これも時代の流れ。ならば手に入れられるときに手に入れるしかない。
そのときは「車両価格85万円」と、「仕向けが不明確なので、もしかするとライト交換があるかも」ということだけ確認して、契約はしないで帰った。

一週間後、再びその店を訪れた。目的はサンダーキャットの契約。一週間の間に冬のボーナスの額を確認し、全額投入すればこれまでのわずかな貯金とあわせて一括現金払いができることを確認していたのだ。
早速、店長に話をつけ、バイクの手配をしようとしたとき、予想外の事態が発生した。ない。サンダーキャットの在庫がどこにもない。少なくとも愛知県内の主要な問屋からはなくなったらしい。そいつは困った。しかし他に欲しいバイクなど急に思いつかない。
ラインアップがずいぶん寂しくなったYAMAHAの逆輸入車カタログをしばらくながめているうち、頭の中身がFZS600にすりかわった。これならあるだろう。色は青。もし色違いなら...もういい。文句は言わん。そして案の定、残っていたのは趣味の悪い「SP仕様」だった。契約書にサインし、代金は翌日持参することを約束してその日は帰宅した。

翌日の朝、銀行で100万円近い現金をおろしてバイク屋に向かった。新車の契約なのに、あまり気が乗らない。気が乗らないのなら買わなければいいのだが、そういうわけにもいかない。なにしろ我が黒猫こと1999年型サンダーキャット(黒)は走行距離8万キロ近く、これ以上負担をかければあと1年も持たないことは明白だったからだ。
FZS600。関東在住だったころ、お世話になっていた店の常連さんの一人がこれに乗っていた。その人はFZ400からステップアップしたそうで、GIVIのハードケースを装着して通勤からツーリングまで幅広く乗り回していた。そうだ。FZSならクラウザーのK2かK3が付けられるはずだ。そうなるとロングツーリングの幅が若干広がるかな。アップハンドル+ハーフカウルでスピードもそんなに出せないだろうし。となると、猫を飼う予定だった予算よりも数万円安く上がるメリットが生かせるというものだ。
ところがバイク屋に入るとまたまたどんでん返しが待っていた。なんとサンダーキャットが入手できるというのだ。色は残念ながら欲しかった青ではなく赤。しかしFZSとサンダーキャットを比べられると結果はひとつしかない。かくて契約書は新たに書き直されることとなった。
仕向けは残念ながら英国ではなく、ヘッドライトの換装が必要となった。そのため当初予算を数万円逆にオーバーすることになった。入荷時期は早くて2002年1月、納車は2002年2月以降となりそうという話を聴いていたが、そんなことはもう僕には意味がなかった。サンダーキャットがまた手に入る。それだけで十分だった。たとえ「国内仕様、最高出力69馬力」だったとしても僕は手に入れたに違いない。3年弱におよぶサンダーキャット生活と世の中の情勢は、僕の頭の中からサンダーキャット以外のバイクを消し去ってしまっていた。

年が明けて2002年の1月も末になった頃、ようやく赤猫こと2001年型サンダーキャット(赤)が入荷した。電話連絡を受けた翌日、さっそく仕事帰りに寄ってみた。他の大型バイクと並べられて鎮座していたそれは、紛れもないサンダーキャット独特のフォルムだった。ただ、赤いフルカウルはカワサキZZ−R400やスズキRF400Rを思わせ、独特なフォルムを少しだけ損ねているような気がする。
細かい部分を見ていく。まずスピードメーターがキロ表示になっている。ヨーロッパ向けでは英国仕様のみキロ・マイル併記で、残りの国々はみなキロ表示なのだそうだ。それにしても相変わらず300キロ近くまで目盛が振ってある。現在のマイルメーターに比べると目盛の感覚が狭まっていて、なんだかうるさく感じる。続いてトップブリッジを眺めると、YAMAHAの音叉マークが彫刻されている。これも「お飾り」という感じで好きではない。その他のパーツは1999年モデルと何も変化がないように見える。相変わらずユニクロ鋼を多用した安っぽさが光る。そしてタイヤがダンロップからメッツラーに変わっていた。初期型のR1に装着されていたのと同じようなパターンだ。溝の方向が進行方向ではなく横方向がメインで、以前お世話になっていたバイク屋さんが「剛性がない」「グリップしない」などなど散々にけなしていた挙句、自らも転倒事故を起こしてしまった。そんなタイヤである。これもコストダウンの一環だとすれば悲しい。
見れば見るほど、気に入らない部分が噴出してくる。せめて色が希望どおりの青だったらなぁ...そんな感想ばかりがため息混じりに出てくるのみ。実は現車を見るまで、黒猫の処遇をどうするかを決めかねていた。どうせ下取り代は出ないのでもうスクラップにしてしまうか、それとも個人売買でダマシをくれて適当に処分してしまうか。そんな気分が一気に失せた。まだ黒猫は必要だ。いや、メインはあくまでも黒猫であり、赤猫はその補佐だ。黒猫の寿命を延ばすためのセカンドバイクだ。セカンドバイク...にしては高いよなぁ。
なんだか「じゃあ何で買ったの?」という突っ込みが入りそうな否定的コメントばっかりだけど、これもサンダーキャットを純粋に愛すればこその辛口批評なのだよ。わかっておくれ、赤猫君。

何はともあれ、今週末には赤猫がウチにやってくる。アパートの駐車場で2台の猫が並んだところを写真に収めて、ホームページのメインイメージを開設以来初めて更新しようかね。

<INDEX> <PREV> <NEXT>