旅日記・2000年夏(1)

〜陸奥大陸我侭気侭二輪車単独迷走紀行〜



7月29日(土)

逃避行

どこへ行くあてもない。ただ、北へ向かいたかった。
朝、ゴミの処理や洗濯を済ませた後、おもむろに荷物をまとめてバイクのエンジンをかけたのは8時を少し回った頃だった。いつもなら日の出前に出発するのだが、ずいぶんのんびりとしたものになった。今回の旅はテント泊のつもりなので、その日のうちに帰る必要がない。つまり無理して夜を徹してまで走る必要がない。
国道4号線、宇都宮街道に出るまでのルートを走りながら考えていた。とりあえず、第二京浜国道で都内に入ったが、都心部が渋滞しているようだったので環七に入った。これが大失敗で、4号線に出るまでに2時間近くも費やしてしまった。どう考えても、都内で渋滞にもまれていたほうが早かったはずだ。というのもルートをよく確認せず、なんとなく「環七を通ったらかなり北の方に抜けられるはず」と思い込んでいたからだ。後になって地図を見て後悔することしきり。これだから旅は面白い。
その後もズルズルと一般道を北上していく。暑い。とにかく暑い。途中で何度となく休憩し、缶ジュースを喉に流し込む。午後1時近くなってようやく氏家近辺に到達。遅い。これじゃあ今日中にどこまで行けるやら? 道路標識には「福島 147km」とある。半分、もう帰ろうかという気持ちになりかけている。

東北道白河IC手前1km地点の交差点を左折し、しばらく走るとラーメン屋さんがある。店名を「いまの家」といい、福島県内では結構名の知れた店らしい。僕がよく足を運ぶ、氏家の「みうら」も、ここから暖簾分けされたらしい。今日は昼飯時を思いっきり外しているのでガラガラの店内。ミソラーメンを注文した。ミソラーメンとはいうものの、ぱっと見た目は「タンタンメン」に近い、唐辛子というか、ラー油の色をしたスープ。ところが見た目ほど辛くない。これは意外。辛いものはまるで駄目!の僕が、スープまでキレイに飲み干していた。
店を出て再び国道4号線に戻ったが、あまりの暑さに閉口して、白河市内にかかる「白河橋」のほとりで昼寝を決め込んだ。30分位、本気で寝ていたと思う。バイクを日傘代わりに、川の音をBGMにして...そのうち太陽が動いて顔に日があたったところで目が覚めた。もう行かなくては。

多少混雑している郡山市内をなんとか通り過ぎ、福島市内を2車線の快適なバイパスでサラリと通過する頃、そろそろ日も沈みかけてきた。日没前に宿、もとい野営場所を探さなければならない。

馬牛沼 山の中の国道沿いにふと現われた大きな沼。「馬牛沼」という名前らしい。休憩がてら、地図を眺めた。もうすぐ白石市内。白石を過ぎると次は仙台。仙台まで行ってしまうと寝場所探しは一苦労となりそうだ。

白石市内に近く、できれば温泉があったらいいな...ということで目に付いたのが小原温泉というところだった。国道4号線から標識に従って左折し、夕闇迫る山道を飛ばして行く。しばらくいくと、温泉入口の案内標識が見えたが、さらに奥へ向かって行く。トンネルを抜け、あたりが少し明るくなったところに、なんとか公園入口、という標識が見えた。公園?ということはテントを張る場所ぐらいあるだろう。温泉街の少し上流側にある、まだ新しい、というか工事中の個所が残っている公園。駐車場のすぐ上にトイレがあり、見晴台がある。これはなかなかよろしい場所じゃないか。
宿泊場所が決まったところで夜食もとい寝酒の確保に出かけた。先ほどの道をさらに奥へ奥へと進んでいくが、開いている店がない。というか、店自体が碌にない。仕方なく引き返す途中、やっと酒屋らしき店を発見し、ビールと魚肉ハムを確保した。さて、件の駐車場に戻ってくると、マイクロバスが2台ほど止まっている。なんだ?と思っていると、地元民とおぼしきおじちゃん・おばちゃん・子供たちがぞろぞろと降りてきた。そしてアレヨアレヨという間にバーベキューの準備が完了していた。こいつはまいった。温泉旅館にでも泊まるかね?と思ったが、それには及ばず、公園の端っこに丁度いい場所を見つけた。もうすっかり夜になっている。カンテラのあかりを頼りにテントを張り、荷物を運び込んでようやく本日の行動終了。


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